第108章 彼女の代わりに勘定をつける

藤堂律POV

指先が彼女の髪に触れた、その瞬間――動きがぴたりと止まった。

顔から血の気が引く。さっきまで甘やかな熱を宿していた視線が、いきなり氷みたいに冷えた。瞳の奥で、危険な嵐が渦を巻く。

「ここ……」

白い首筋。指の腹でそっとなぞり、怒りを噛み殺した低い声で問う。

「どうした?」

茜音は俺の指が示す場所を自分でも触ってみる。痛みはないらしい。

「ん?」

本当に、傷があることすら気づいていない顔だ。

その無頓着さが、余計に腹の底を煮え立たせた。

俺は彼女の顎に指を添え、軽く顔をこちらへ向けさせる。距離を詰めると、見えた。

白鳥みたいにしなやかな首の側面に、指の半分ほ...

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