第112章 申し込む

茜音POV

彼女は顔を上げた。瞳の奥まで、怯えと恐縮が詰まっている。

私は手を止め、視線だけを向ける。声は淡々として、温度がない。

「どうしたの。住みにくい?」

「ち、違います! 住みにくいとかじゃなくて!」

山本梨衣は慌てて両手を振った。緊張で声が少し裏返り、すぐに自分で抑え込む。そこに滲むのは、隠しきれない卑屈さだった。

「……良すぎるんです。良すぎて、逆に落ち着かなくて。社長、私、貧乏ですけど、あの辺の相場くらいは分かります。私の給料じゃ、あんな部屋……絶対に借りられません。もしかして……遠回しに助けてくださってますか?」

まるで心臓ごと差し出すみたいな、真っ直ぐな顔。

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