第113章 憧れの『S』

茜音POV

原稿用紙の上に指先をそっと落とす。彼岸花と台座をつなぐ、ちょうど関節の部分。

「ここ、構造が固すぎる。釘で打ちつけたみたいに見えて、息が死んでる」

声は自分でも驚くほど冷えていた。

「彼岸花の美しさって、漂う感じと、どこか壊れそうな儚さにあるでしょ。そこをこう固定しちゃうと、途端に重たくなる。鈍い」

山本梨衣が、はっと息をのむ。頭を殴られたみたいな顔で、私が示した一点を見つめたまま固まって――次の瞬間、ぱっと目が輝いた。

修正案が、脳内で一気に増殖しているのが分かる。視線の熱が変わった。職場の「助かった」という感謝から、専門家への崇拝へ。段階が一つ、いや二つ上がった。...

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