第117章 押しかけられる

志水寧々POV

神崎健司が、目の前の金箔がきらめく個室――『鳳凰の間』の扉を、指先でちょいと示した。

その声には、嘲りが滲み出ていて、今にも溢れそうだった。

私は彼の指の先を追う。

胸の奥で、嫉妬が雑草みたいに一気に伸びた。

――鳳凰の間。

J市でもっとも金が溶ける場所。私は噂でしか知らない。

なのに、茜音が入った? どうして? 何の資格があって?

毒々しい考えが脳裏をよぎる。けれど顔には、すぐ「痛ましい」表情を貼りつけた。

目尻を赤くして、私は神崎健司の腕に縋りつく。声まで震わせて、泣きそうな調子で。

「そんな……どうして……。あの人、どうして自分を大事にしないの……!...

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