第12章 男を誘惑する

菅田夢香視点

翌朝、私はわざと少し遅く起きた。茜音と朝食を一緒に取る、あの気まずさを避けたかったから。

――なのに階段を下りた瞬間、目に入ったのは、母が茜音の隣にぴたりと寄り添い、パンフレットを手に楽しげに何かを相談している光景だった。

「茜音、このスパクラブね、私がよく行くところなの。会員制で外に漏れないし、セラピストも海外から呼んでるのよ。午後、一緒に全身ケアしない?」

母の瞳は期待でいっぱいだった。二十年の空白を埋めるみたいに、自分の世界を娘に分け与えたくてたまらないのだ。

私は足を止めた。

そのクラブは名家の奥様たちが集まる、最上級の社交場。昔は母が――私だけを連れて行っ...

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