第16章 おじいさんが気を失った

茜音視点

礼儀正しいお嬢様然とした女が、保温の施された宝箱を両手で捧げるように抱え、壇上へ上がった。蓋が静かに開かれる。

中身――MMRの実物は、角度のせいで客席からははっきり見えない。だが、その「神秘」だけは誰もが噂で知っていた。

「MMRには肌を再生させる力がございます。お使いいただければ一夜で若返ることも夢ではありません。開始価格は300万!」

その瞬間、頭の靄が晴れたみたいに視界が冴え、私は背筋を伸ばして座り直した。

私が調合したスキンケアバームでも、母の目尻の細かな皺は薄くできる。けれど、長年の疲労が刻んだ痕跡を根こそぎ消すには――最後の一味が足りない。MMR。

だが札...

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