第42章 彼女の寝顔

茜音視点

原野家の老夫婦が車に乗り込み、そのまま走り去ったあとも、私はその場に立ったまま、テールランプが車列に溶けて消えるまで見送っていた。完全に見えなくなってから、ようやく視線を戻し、スマホを取り出す。外で待っている藤堂律に連絡を入れるつもりだった。

指先が画面に触れた、その瞬間。

怒気と詰問をない交ぜにした男の声が、真横からぶつかってきた。

「茜音?」

顔を上げると、神崎健司と志水寧々がこちらへ歩いてくるところだった。

眉ひとつ動かさない。彼を空気みたいに無視して、私はそのまま画面に目を落とし、メッセージの続きを打つ。

ここまで露骨に黙殺されて、神崎健司の顔色がみるみる沈ん...

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