第52章 心が動く

茜音視点

菅田雪恵は菅田夢香の言葉を最後まで聞きもせず、いきなり彼女の腕をつかんで制した。口調は有無を言わせない。

「あなたまでついてきて何するの。野次馬はいいから、邪魔しないで」

あまりに露骨で、露骨なほどの拒絶。

菅田夢香の続きの言葉は喉元で詰まり、結局、何も出てこなかった。

私は菅田家の車が、逃げるように――ほとんど敗走みたいな勢いで走り去っていくのを見送る。

次の瞬間。

黒いベントレーが、音も立てずに私の横へ滑り込み、そのまま止まった。

窓がすっと下がる。

現れたのは藤堂律の、整いすぎた顔。レンズの奥の瞳は薄い笑みを湛えている。

「乗れ。送る」

私はドアを開けて...

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