第56章 嘲笑

茜音視点

病院の正面玄関を出た瞬間、肺いっぱいに入ってくる外気が、さっきまでの閉塞感をすっと洗い流した。

背後では、志水家の三人がまるで晒し台に縛りつけられたみたいに動けずにいる。周囲の視線が針の雨のように突き刺さる――蔑み、嘲笑、面白がる気配。

藤堂博文がようやく「一人足りない」ことに気づいたらしく、きょろきょろと辺りを見回して眉をひそめた。

「律のガキはどこへ行った? 未来の嫁を置いて、本人だけ消えるとはどういう了見だ」

車の脇で待機していた護衛がすぐに進み出て、恭しく頭を下げる。

「旦那様。藤堂社長は海外向けの緊急ビデオ会議が入りまして……。終わり次第、旦那様と茜音様のとこ...

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