第72章 皆の晴れぬ恨みを晴らす

茜音POV

私は相手にしなかった。口の開いた野菜かごから、しおれたトマトをひとつ摘まみ、指先でくるりと回す。口元に、冷たい笑みが浮かぶ。

振り向きざま、そのトマトを料理長の足元へ放り投げた。声は低く、凍るように澄んで――それでも厨房じゅうに通った。

「中村佳代」

「はい!」

「昨日、欠勤した連中。それから今日出勤してる連中。全員、ここに集めて」

中村佳代の動きは早い。十分もしないうちに、がらんとしていた食堂は人で埋まり、ざわめきが渦を巻いた。

連絡が回った社員は全員来た。病欠で家にいた者も、無理に出てきた者も、例外なく。

互いの顔を見合わせ、青白い顔に困惑を貼りつけている。何...

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