第78章 そこにいるのは誰だ?

茜音POV

扉の向こうから、かさ…かさ…と紙が擦れるような音がした。しばらくして、梅宮早絵の声がふっと丸くなる。宥めるようでいて、甘い餌をぶら下げる響き。

「田中さん、落ち着いて。私たち、同じ船に乗ってるんだから。私が見捨てるわけないでしょ。はい、ここに50万。とりあえず受け取って、気持ちを落ち着かせて。安心して、もう買い手に当たってる。すぐ捌けるから。あなたに迷惑はかけない」

扉の向こうで田中さんが黙った。札束の厚みを確かめているのだろう、間が妙に生々しい。やがて、受け取った気配。声は幾分和らいだが、釘は刺す。

「早絵さん、これが最後だ。明日までに必ず捌け。じゃなきゃ、この倉庫の鍵...

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