第83章 誘惑

菅田夢香POV

階段の踊り場で、下から聞こえてくる会話を――私は一言残らず聞いていた。

菅田グループの株式5%。それに、これから先の事業すべて……。

本来なら、全部、私のものだったはずなのに。

どうして茜音が戻ってきただけで、私のすべてが奪われるの?

胸の奥を、嫉妬と悔しさが毒蛇みたいに噛み砕いていく。私は口を両手で塞ぎ、声を殺した。泣き声だけは、絶対に漏らしたくなかったのに――身体が勝手に、がくがくと震える。

屈辱の涙が堰を切って落ちた。

憎い。憎くて、今すぐ駆け下りて、茜音をこの世から消してしまいたい。

「泣いて、何になるの」

背後で、小嶋花子の冷えた声がした。

彼女...

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