第84章 嫌悪

茜音POV

藤堂律は表情ひとつ変えなかった。ただ、菅田夢香が倒れ込んできた瞬間、反射みたいに身体を横へずらす。

ドン――。

夢香が「計算どおり」の転び方をしたはずの身体は、冷たい床に容赦なく叩きつけられた。鈍い音が廊下に沈む。

私は階段口に立ったまま、その一部始終を見ていた。

菅田夢香はうつ伏せになり、涙が一気にせり上がってくる。目尻に溜まって、今にもこぼれそうに揺れた。

藤堂律がようやく目を伏せ、見下ろす。眉間には深い皺。そこに憐れみなんて欠片もない。

「お前、足でも壊れてんのか?」

氷みたいな声。

「歩けねえの?」

菅田夢香の身体がびくりと固まる。信じられない、という...

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