第86章 捕まえた

茜音POV

私は堪えきれず、顔を冷たくしたままその場を離れた。

背中に、藤堂律の視線が――触れられるみたいに、重く落ちてくる。

見られているのは分かっていた。さっきあのメッセージを受け取ってから、ずっと上の空だった。彼はそれを、全部見逃さなかった。

――

会社へ向かう車内は、息が詰まるほど重苦しい。

藤堂律が何度か口を開きかけた気配がした。けれど、言葉はいつも喉の奥で引っ込む。私が纏っている「近寄るな」という冷気が、彼の言い分を丸ごと押し返しているのだろう。

彼は、あのメッセージの中身を知らない。ただ、私の機嫌が最悪で、それが自分のせいじゃないことだけは分かっている。だからこそ...

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