第89章 嫉妬する

茜音POV

深雪デザイン、最上階――社長室。

血の雨が降るような粛清が終わったばかりで、社内はまだざわついている。けれど同時に、空気だけは妙に澄んでいた。怯えと安堵が入り混じった、張り替えたばかりの布みたいな匂い。

私は大きな本革のチェアに背を預け、目を閉じて息を整える。

張り詰めた時間が長すぎたせいで、こめかみがズキズキと脈打っていた。いつもは冷えたままの顔に、珍しく疲労が滲む。

その静寂を、机の上のスマホの震えが破った。

まぶたすら上げない。誰からかなんて分かっている。

この時間に、私のスマホを連打できる度胸の持ち主は――藤堂律しかいない。

手探りで端末を掴み、通話を繋ぐ...

ログインして続きを読む