第95章 キスの味

茜音POV

ドン、と。頭の中で何かが爆ぜた気がした。

――最初の奥様?

私は勢いよく振り向き、藤堂律を見た。

いつも凪いだままの瞳に、初めて小さな亀裂が走ったように見える。

けれど、彼は私の探るような視線と動揺を真正面から受け止めても、欠片ほども怯まなかった。むしろ口元の笑みは深くなり、予想どおりの展開だと言わんばかりに、目の奥に得意げな色さえ浮かべる。

私は唇をきゅっと結び、言葉を区切って問う。

「……今の、ほんとなの?」

「誓う」

藤堂律は、片手を胸に当てて真剣な顔をした。整った顔に、見たことのないほどの真剣さが宿る。

「この屋敷も、この屋敷にいる人間も――奥様と認め...

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