第120章 1分も待てない

運転席の男が、ゆっくりとこちらへ顔を向けた。

まだ若い。エラと、せいぜい数歳しか違わないだろう。

額の裂傷から血が流れ落ち、片目の半分を赤黒く塗りつぶしている。

血の膜越しに、男は車の外――必死にドアをこじ開けようとしている女を、呆然と見つめていた。驚愕が、そのまま表情に張りついている。

「おまえ……」

――やめろ。俺のことなんか放っておけ。俺はおまえを殺しに来たんだぞ、わかってるのか。

だがエラは手を止めない。

運転席側が開かないと見るや、助手席へ回り込み、今度はそちらのドアを力任せに引いた。

「なんで……助けるんだ」男の目が揺れる。「この車、いつ爆発してもおかしくない……...

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