第26章 心魔を克服する

ヴィアンだ。

エラは反射的にほんの少しだけ首を傾け、扉の隙間から覗くようにして――案の定、ヴィアンの横顔を捉えた。

……冤家は、こういうところでぶつかる。

エラは視線を引っ込めると、何事もなかったかのように俯き、スケッチの線を進めた。

「言ったでしょ。この個室は嫌。廊下の突き当たりの部屋にして」

ヴィアンの声が、さらに一段高くなる。

「クレルモン嬢、あちらはすでにご予約が入っておりまして……」クラブの支配人が恐縮しきりに宥める。「こちらも悪くございません。窓が庭に面していて、採光も――」

「知ったことじゃないわ。予約してる人に別の部屋へ移ってもらえばいいでしょ。今日、私と一緒に...

ログインして続きを読む