第103章 検査室の外

桐生冬紀は黙って話を聞きながら、胸の奥がきりきりと痛んだ。ティッシュを取り、母の目尻に溜まった涙をそっと拭う。

「大丈夫」なんて言えない。

「恨んでない」なんて、もっと言えない。

けれど――今の自分は、以前ほど憎んでもいなかった。

「昔のことは、もう終わりにしよう。これからは言わないで。私はお母さんを恨んでないし、私のことも心配しなくていい。この数年、ちゃんとやってきたから。手術代も気にしないで。お金ならある。合う型が見つかったら、手術できるよ」

母が、かすかに笑った。

「冬紀が元気なら……それでいい、それでいい……」

母の耳に残ったのは、「ちゃんとやってきた」の一言だけだった...

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