第111章 喰われるだけ

「……」

どうして、いつもこうなんだろう。

いちばんみっともなくて、いちばん惨めな瞬間を、決まって彼に見られる。まるで――彼の庇護の外では、人間らしくも生きられないとでも言われているみたいに。

御堂怜央は何気なくスーツの上着を脱ぐと、そのまま彼女の上に放り投げた。

男の纏うウッディな香水の匂い。洗練されていて、高価で――それが桐生冬紀には、顔を上げられないほど重かった。

幸い、御堂怜央はいつもどおり雲の上の人みたいに高いところにいて、彼女を一瞥もしないまま、中島社長のほうへ歩いていく。

中島社長は悪態をつきながら床から起き上がった。

「誰だよ!? 俺の邪魔しやがって! 死にてぇ...

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