第114章 暇だと思ったか

桐生冬紀は指をぎゅっと握りしめた。爪が掌に食い込み、じんと痛むほどに。それでも声だけは冷静に保つ。

「お父さん、ナイフを置いて。置いて」

大勢の警官を前に、桐生の父の顔色は青ざめたり白くなったり、落ち着きなく揺れた。

「お、俺も……俺も分かんねえんだ、冬紀。わざとじゃねえ。どうしてこんなことに……」

「そのナイフ、どこから持ってきたの?」

桐生冬紀は喉を鳴らして唾を飲み込む。

「俺たち……廊下でずっと待ってた。医者が全然来ねえから、母さんにリンゴでも剥こうと思ってさ。そしたら看護師が来て『手術できない』って、帰れって……心臓がないって……言ってることがはっきりしねえんだよ。俺、カ...

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