第124章 月

「信じないのか?」

黒崎悠真が眉をつり上げた。

「信じます。信じてるからこそ、そんな簡単に身につけられる能力じゃないって思うんです」

でなければ、漢方医なんてあまりにも楽すぎる。

脈だけで相手の体の状態を見抜くなんて、よほどの天才でもない限り、何十年も丹念に積み上げてきた裏づけが必要だ。しかも黒崎悠真は教授だ。二足のわらじで、そんな域まで届くはずがない。

黒崎悠真はふっと笑って、あっさり認めた。

「うん。できない。まったくできない」

桐生冬紀が小さく言う。

「嘘つき」

黒崎悠真は彼女を見た。

「俺が嘘をつくのは、君が嘘をつかないって信じてるからだ」

桐生冬紀の眉が、思わ...

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