第137章 離さないで

桐生冬紀は今日こそ克服しようと腹を括り、歯を食いしばって鞍にまたがる覚悟を決めた。

ところが、馬がちょこんと身じろぎしただけで――彼女は反射的に一歩引いてしまう。

すでに馬上にいる黒崎悠真は、冬紀の顔に浮かぶ目まぐるしい心の動きを見て、馬の首に身を預けるように笑った。

「まさか冬紀に、怖いものがあるとは思わなかった」

桐生冬紀は肩を落とす。

「黒崎教授の目には、私って何も怖がらない人に見えてるんですか?」

黒崎悠真は含み笑いで。

「だいたい、そう」

知り合ってからずっと、彼女は何でも背負って立てる顔をしていた。

桐生冬紀は自分に容赦がない。もうやるしかないと踏ん切りをつけ、...

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