第159章 兄さんと呼ぶ

Y市に着いてから、桐生冬紀はようやく気づいた。こちらはT市よりずっと冷える。持ってきた服では心許なくて、近場のデパートでダウンを買おうと思った。

ちょうどホテルのロビーで黒崎悠真と鉢合わせる。話してみれば、彼も着るものが足りていないらしい。互いにからかい合いながら、連れ立ってデパートへ向かった。

冬紀はダウンを一着選び、悠真は同じ型の黒を買った。

悠真に会計を持たれるのが嫌で、彼が別の商品を見に行った隙に、冬紀は先に自分の分だけ支払いを済ませる。

「冬紀」

背後から呼ばれ、振り返った瞬間――悠真がマフラーを彼女の首にふわりとかけた。

「マフラーも足したほうが、あったかい」

手際...

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