第163章 彼女のことを気にしているのか

幸い、桐生冬紀という人間は昔から独りで立つことに慣れていた。誰かに宥められなくてもいいし、慰められなくてもいい。どれほど崩れた感情でも、水みたいにぶちまけてしまえば、それで終わる。

彼女はふっと息を吐き、少しずつ落ち着きを取り戻した。

焦らない、焦らない。もう一度やってみる。きっと――立ち上がれる。

……

御堂怜央は部屋に戻る気になれず、そのまま下へ降りようと下りボタンを押した。

上階から降りてきたエレベーターの扉が開く。中に立っていたのは来栖千隼だった。

来栖千隼は、怜央の頬に残る赤い跡と、彼がいる階をひと目で捉え、きりっとした眉を上げた。

「桐生秘書のところに行ってたのか?...

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