第166章 誘拐された

御堂怜央の声は、どこか冷えていた。

「来栖千隼が頼んだの、Y市の名物ばっかだ。激辛だぞ。食えるのか?」

――食えるわけがない。だから桐生冬紀は、さっきもほとんど箸をつけていない。

でも、それが彼に何の関係がある?

御堂怜央はもう電話をかけていた。

「B88の個室に、あっさりしたものを。十分で」

桐生冬紀は彼を見つめる。……わざわざ、彼女のために食事を組み直した?

「御堂社長、恐れ多いですね」

思っていた以上に、この男は機嫌の振れ幅が大きい。

昨夜あれだけ拗れたのに、今さら「食べられるかどうか」を気にするなんて。

御堂怜央は一瞥だけくれて、言い捨てた。

「驚くな。生きてな...

ログインして続きを読む