第168章 彼を責められない

「……」

桐生冬紀は慌てて言い添えた。

「黒崎教授、誤解しないでください。私は別に――」

「聞かない」

黒崎悠真は子どもみたいに言い張る。

「どうせ俺はそう思う。桐生さんが異議ありなら、こっちの用事を片づけてからY市まで迎えに行く。そのとき、ちゃんと討論しよう」

彼女は彼の学生でもないのに――桐生冬紀は、何をどう言っても言い負かされる気しかしなかった。

黒崎悠真が一言。

「もう遅い。早く休め。切るぞ」

本当に、そのまま通話は切れた。抗議のしようもない。

黒崎悠真はベランダの扉を開け、ジョウロを手にして鉢植えのミントに水をやる。胸の奥が、こんなにも軽い夜はなかった。

大学...

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