第169章 飛び降り

桐生冬紀は一瞬、言葉を失う。

「あなた……」

施設の作業員――そう見えた。

男は低い声で尋ねた。

「大丈夫か」

「私は大丈夫。あなたは? 平気? 助けてくれてありがとう。名前は?」

冬紀は我に返り、矢継ぎ早に問いかける。

男は肩をやられていた。すでに誰かが医者を呼んでいて、ほかの作業員たちが彼を支えながら外へ連れ出していく。

冬紀もまだ心臓が落ち着かない。周りの人間が取り囲み、口々に具合を訊ねてきた。

数メートル離れた場所に、御堂怜央が立っていた。

鉄筋が落ちてきた瞬間、彼は反射的に振り返り、数歩だけ駆け戻った。だが距離が遠すぎた。

その光景が、怜央の脳裏に別の落下...

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