第173章 ペット扱いするな

条件は、彼女のほうから突きつけられた。

桐生冬紀が問う。

「たとえば?」

白と黒の鍵盤が規則正しく鳴り、旋律がゆるやかに部屋を満たす。御堂怜央は弾きながら、淡々と告げた。

「専属秘書の席は、そのままおまえに残す」

桐生冬紀は重ねて言う。

「それだけ?」

御堂怜央は続ける。

「年俸を上げる。賞与も増やす」

桐生冬紀は、なおも。

「ほかは?」

御堂怜央が横目で彼女を見る。目を細めた。記憶の中の彼女は、こんなふうに欲深くはなかったはずだ。

だが、交渉に乗っている。つまり戻る気がある。そう判断して、彼は指を止めた。

「……車、まだ持ってないのか。移動が不便だろう」

桐...

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