第182章 冬紀

桐生冬紀は反射的に立ち上がると、手近にあった枝を掴み、草むらをばさばさと叩いた。

……何もいない。

夜風が葉を揺らし、ざわざわと音を立てている。見上げると、闇の中で木々の影が不気味に揺れ、何本もの手が伸びて揺れているように見えた。

そんな怪異じみた光景を見つめていると、風の音さえ女の悲鳴に聞こえてくる。

脳裏に、胸の悪くなるようなホラー映画の場面が次々と浮かんだ。

こんな場所に長くいれば、実際に危険がなくても、怖さだけで自分を壊してしまう。

桐生冬紀は目の前の木に抱きつき、よじ登ろうとした。高いところから遠くを見渡し、灯りを探せば、道が見つかるかもしれない。

だが、目の前の柳杉...

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