第189章 同一人物

桐生冬紀は息を沈めた。

あの一件から、まだ二か月しか経っていない。忘れるほど時間が経っているわけでもない。あのとき彼は、彼女を取引材料にして案件をまとめようとしていた。いまさら言い逃れをするなんて、時間が経てば自分のしたことまでなかったことにできるとでも思っているのか。

桐生冬紀は、また知らないうちに御堂怜央のペースに引きずられかけた思考を無理やり断ち切り、黙ったままテーブルの上の救急箱を片づけた。

相葉琴音にもらった加湿器が目に入る。部屋へ持っていき、コンセントを差す。しゅわ、と細かなミストが噴き出し、たしかにほのかな香りが混じっていた。肩の力が抜ける匂いだ。

御堂怜央は鈴奈を見逃...

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