第194章 誰も彼女を救わない

バーの二階。

御堂怜央は、騒がしすぎる場所が好きではない。

坂本裕也がやっている西宮ですら、比較的静かなほうなのに滅多に足を運ばない。ましてや、完全に遊興目的の店など論外だ。

それでも今夜ここにいるのは、会う約束を取り付けた相手が場所を指定してきたからだ。着いてみて初めて、ここがバーだと知った。

ボックス席に腰を落とし、脚を組む。相手が勝手に頼んだ酒には手をつけない。喉が渇いても、フルーツ盛りからみかんを一つ取っただけ。

所作は急がず、ゆっくりと――妙に品がある。

今日はシャツではなく、黒のタートルネックに焦げ茶のジャケット。色と欲の匂いが渦巻く場所でも、彼だけは同化しない。冷淡...

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