第209章 好きでたまらない

来栖千隼は思った。相手が教授でなければ――そして自分の反応がもう少し遅ければ――面倒なことになっていた、と。

彼は即座にスーツの内ポケットからハンカチを抜き、薬の箱をくるんで黒崎悠真に押し戻す。視線だけで御堂怜央に「行きましょう」と促した。

この二人、ホテルの正面で殴り合いになりかねない。

車に乗り込むなり、来栖千隼は眉間を押さえた。

「……どうしてわざわざ挑発するんですか」

「俺が挑発した?」

御堂怜央は宝石みたいなロイヤルブルーのカフスをくるくる回す。機嫌がいいのが、隠しようもない。

「してないと?」来栖千隼は言いかけて、言葉を飲み込む。「相手の恋人だって分かってて、黒崎教...

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