第224章 刑務所に入ったことがある

桐生冬紀は振り返って、彼を見た。

御堂怜央はタオルを差し出し、眉尻をわずかに上げる。

「俺は急いでない。おまえも急がなくていいなら、それでいい」

桐生冬紀が急がないはずがない。母の容体が戻らないかぎり、彼女の心は一日だって宙に吊られたままだ。

ただ、姉に電話をするたび「お母さんは安定してる」と言われるものだから、神経を張り詰めっぱなしにはならずに済んでいた。だからこそ、何度も何度も考える余裕ができてしまう。

彼女は御堂怜央を選びたくなかった。だから別の道を必死に探していた。

無言でタオルを受け取り、洗面所でいちど水を通してから戻り、彼に渡す。

御堂怜央が体勢を整えた。

「腰の...

ログインして続きを読む