第236章 彼女にはできない

姉さんの意識は、窓の外で鳴り響いた雷鳴に一瞬さらわれて――次の瞬間、医師の叱責に引き戻された。

言葉が喉でつかえる。

「じ、人工心臓って……危ないんじゃ……」

でも、今は人が死にかけている。危険だの何だの、言っていられる状況じゃない。

それに、前は冬紀だって迷っていた。人工心臓に替えるかどうか。

自分が、こんな決断をしていいのか。

もし替えても母が助からなかったら。

あの大金は。

冬紀は――責任を取ってくれるのか。

姉さんの頭の中を無数の考えが駆け抜け、病室に響く危険アラームの音と絡まり合って、鼓膜を何度も叩いた。

桐生冬紀の携帯に、もう一度かける。

やはり電源は切れた...

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