第241章 癖がついただけ

違う。

もともと、ドナーはいた。

桐生の母は、本来なら三か月前には移植を終えて、順調に回復しているはずだった。

桐生冬紀は、どうしても考えてしまう。もし三か月前、母があの心臓を手に入れていたなら――いま、母はICUで生きるとも死ぬともつかない状態で横たわっているはずがない。町の家で、いつものように暮らしていたはずだ。

冬紀は深く息を吸い込む。肺の奥まで空気が入り込んだ瞬間、鉄錆みたいな血の匂いが喉を裂いた。

桐生冬紀は踵を返し、階段を下りる。

御堂怜央に会いに行く。

……

病院の駐車場。さっき降りたあたりで、冬紀は一目で分かった。御堂怜央の車が、まだそこにある。北野紗耶が傘を...

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