第245章 ご機嫌取り

御堂怜央は階段を下り、そのまま車に乗り込むと、短く言った。

「東海へ」

運転手は察し、車を走らせる。

バックミラー越しに見えた御堂怜央の口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。来る前にはなかった表情だ。つまり――さっきまでの三十分、桐生秘書と過ごした時間は、彼を十分に満足させたということ。

運転手は思い切って口を開いた。

「御堂社長、桐生秘書……そろそろお戻りになるんでしょうか」

「いえ、変な意味じゃなくて。俺みたいな者が言うのもなんですけど、出社の道中で社長に報告する秘書の中じゃ、いちばん要点がはっきりしてるのは桐生秘書で……。桐生秘書がいると、社長の仕事もだいぶ手間が省けるって...

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