第249章 彼にキスする

「……損って、何の話?」

御堂怜央が唇の端をふっと持ち上げる。

「報酬を今すぐ払わないのは百歩譲るとしてさ。利息までナシって、俺にケンカ売ってる?」

視線が落ちたのは、彼女の唇。

――キスする気だ。

……するならするでいい。なのに、そんな含み笑いで見つめてくるのは何なんだ。

桐生冬紀は息を殺し、数秒置いて言った。

「御堂社長って、欲しいものはいつも自分で取りに行く人じゃないですか」

「前はな。でも今は、おまえが自分から来るのを見たい」

弄ばれ方が、日に日に手慣れていく気がする。冬紀は唇を結ぶ。

「ここ、外です」

御堂怜央は傘をぐっと低く下ろし、二人をすっぽり覆った。

...

ログインして続きを読む