第256章 キスを重ねた

桐生冬紀は契約書をぱらりと開き、ざっと目を走らせた。合意した配分を見た瞬間、眉間に皺が寄る。

――安すぎる。

市場価格からかけ離れている。柳原グループが、どうしてこんな条件で判を押した?

彼女は署名日へ視線を移した。榎本クルーザーの数日後。

……なら、榎本クルーザーの上で御堂怜央が柳原礼治に何かしらの旨味を渡した。だからこそ、柳原礼治はこの低価格で契約した――筋は通る。

柳原礼治が当時欲しがったのは、彼女という「駒」だった。けれど桐生冬紀は行かなかった。となると、御堂怜央は別の見返りを用意したのか。

桐生冬紀はふと動きを止め、次の瞬間、すとんと腑に落ちた。

……だから、これを私...

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