第260章 従妹

船の上の二人は、声に反応して思わずそちらを見た。

窓辺に寄りかかる男女がいる。

話していたのは男のほうで、桐生冬紀は反射的に思った。――こんなところで?

柳原礼治だった。

柳原礼治はT市の人間ではない。P市の出身で、以前は榎本家の宴に招かれてT市へ来ていたはずだ。まさかここで鉢合わせるとは思わなかった。彼もレストランで食事をするらしい。

隣の若い女は初めて見る顔だ。目立つほど整った容貌で、距離があっても造作の精緻さが分かる。疑いようのない美人だった。

桐生冬紀は、さっき危うく火種になりかけた話題を流すのにちょうどいいと思い、口を挟んだ。

「御堂社長、柳原社長です」

「見えてる...

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