第261章 なかなか面白い

「……」

桐生冬紀は、ようやく思い出した。榎本クルーザーのときだ。御堂怜央に二階の部屋へ連れて行かれ、柳原礼治が麻雀卓の前に座っていて――彼女に、火をつけろと顎で使った。

あの状況で従えば、自分で自分を踏みにじることになる。だから、あのときは行かなかった。

けれどまさか、柳原礼治が今になって蒸し返し、ここで取り立てるとは思わなかった。

理解した瞬間、胸の奥に蘇ったのは、あのときの「軽く扱われた」感覚。そこへさらに、事情も知らないまま弄ばれたような、薄い不快感が重なる。

腹が立つ。

とはいえ、ただ煙草に火をつけるだけだ。別に何かをさせられたわけでもない。怒鳴り返す理由すら、うまく見...

ログインして続きを読む