第267章 弱みを見せて

桐生冬紀は息を殺し、平静を装って言った。

「いいえ。三年とか五年だと思っていたので……十年と聞いて少し驚いただけです。でも、よく考えたら、どこで働いたって仕事は仕事ですし。青雲のために十年働くのも、十分価値があります」

「なら署名しろ。電子署名でも法的効力は同じだ。俺が見てる前でな」

追い立てるように、御堂怜央は畳みかける。

桐生冬紀はスマホを置いた。

「もちろん、御堂社長のことは信じています。ただ、十年……もし私が八十まで生きられるとして、その十年は人生の八分の一です。しかももう二十五年も生きてしまっていて……残りは、そんなに多くないんです」

御堂怜央が鼻で笑う。

「契約書に...

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