第270章 存在しなかったことにする

御堂怜央はひとつ息を沈め、自分も矢を一本取った。

三人の腕はほぼ互角――だったのに、葉山怜美だけは三射連続で的を外した。極めつけは、矢が途中でぽとりと落ちるという有り様だ。

結果、第一ラウンドを取ったのは桐生冬紀と御堂怜央。

ちょうどそのとき、御堂怜央のスマホが鳴った。彼は黒崎友也に目で合図を送る。黒崎友也は小さくうなずいた。

「御堂社長はどうぞ。俺は桐生さんにもう少し教わります」

――御堂怜央は忘れていない。桐生冬紀は本来、黒崎グループに入社するはずだったことを。

御堂怜央は桐生冬紀の指先を軽くつまむようにして、淡々と言った。

「じゃあ第二ラウンドは、桐生秘書と黒崎社長で。勝...

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