第275章 溺れた

まさか、岡村優里だったとは。

桐生冬紀は、礼儀として口元だけで微笑んだ。

岡村優里も向こう側からすい、とこちらへ泳いでくる。そして尋ねた。

「桐生さん、どうして入ってこないんですか? せっかくなんですし、浸かりましょうよ」

「足湯だけでいいの」

桐生冬紀がそう返すと、岡村優里はくすりと笑った。

「てっきり、子どもの頃に溺れたことがあって水が怖いのかなって。温泉にも入れないのかと思って、連れてこようとしてたんですけど」

不意打ちの一言に、桐生冬紀は思わず固まった。

溺れた――。

たしかに一度だけある。高校の水泳の授業で。けれど、どうしてそれを彼女が知っている?

そう思ったま...

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