第280章 駆け落ち

前田家はJ市にある。

J市の年配の人たちは、家で何か問題が起きると、すぐに人を呼び集めて芝居を打ちたがる。

場面が切り替わるたびに、舞台の幕がすっと下りるようだった。

鈴奈は子どもの頃、舞台にこっそりよじ登るのが大好きだった。幕をめくって、裏方がせっせと大道具を組んでいるところや、役者が化粧を替えるところを盗み見て――それが、たまらなく面白かった。

大人になった今だって、その悪い癖は直らない。親戚の弟や妹たちを引き連れて、また舞台へ上がってしまう。

「次、なにやるの?」

スタッフがセットを組んでいるのを見つけて、鈴奈は興味津々で覗き込んでいた。すると背後から、両親の笑い混じりの叱り...

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