第288章 真心を踏みにじる

柳原礼治だった。

桐生冬紀はさっと眉をひそめた。けれど、それは一瞬で、すぐにいつもの無表情へ戻る。

「柳原社長、おはようございます」

「柳原社長の心、痛くて死にそうだよ」

ソファに腰を下ろした柳原礼治は、脚を組み、膝の上に肘を置いて顎を支える。もともと女慣れした軽薄さが顔に出る男だ。口元に笑みを浮かべれば、ますます遊び人めいて見えた。

「桐生秘書、俺、何回も花を送ったのに一度も礼がない。住所、間違えたかと思ってさ。今日はわざわざ確認しに来たんだ」

「そしたら御社の清掃の人から聞いたよ。毎回、受け取ってサインしたあと、そのままゴミ箱に捨ててるって。俺の真心、そんな踏みにじり方ある?...

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