第289章 手書きの恋文

「さっきからきょろきょろして、何を探してる?」

柳原礼治がふいに訊いた。桐生冬紀の気配が、どこか落ち着かないことに気づいていたのだ。

桐生冬紀は視線を引っ込める。

「別に」

柳原礼治は脇のテーブルからカクテルを一杯取り、彼女へ差し出した。

「御堂社長を探してるなら、今夜は必ず来る」

「黒崎社長から、雨宮おばあ様にお祝いを申し上げるよう仰せつかっています。いま、その方を探しているだけです」

桐生冬紀は穏やかに言い、酒はやんわり断った。

「柳原社長はどうぞお構いなく」

柳原礼治は傷ついた顔を作って、わざとらしく息をつく。

「一杯も断るのか? 俺のどこが桐生秘書の好みじゃないん...

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