第297章 話が通る

 彼の掌は熱かった。無視できる触感じゃない。桐生冬紀は反射的に身体を強張らせ、何か言おうとした――その瞬間、御堂怜央は彼女を放し、礼儀正しく一歩ぶん下がった。

 まるで、本当に紳士として支えただけだと言わんばかりに。

 冬紀は慌ててスカートを整え、胡散臭そうに彼を二度見してから、手を差し出した。

「服、返してください」

 御堂怜央は腕に掛けていたジャケットを渡そうとする。冬紀は手を引っ込めた。

「私が欲しいのは黒崎教授のです」

 御堂怜央の目が細くなる。冬紀は仕方なく言い添えた。

「それ、黒崎教授の上着なんです。返さないといけないので」

 御堂怜央の表情は、今にもそのジャケッ...

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