第34章 彼女を娶る

その客は足を止め、彼女の顔を見て「あっ」と声を漏らした。

「桐生秘書じゃないですか。知らないんですか? さっき御堂会長と御堂社長が、危うく人前で言い合いになるところだったんですよ!」

桐生冬紀は固まった。――ありえない。

御堂怜央ほど冷静な人間が、よその宴席で父親と揉めるなんて。

「……本当ですか?」

別の客が慌てて手を振る。

「いやいや、言い合いってほどじゃない。正確には、社長が露骨に顔に出しただけ。ケンカはしてない」

「ほら、あそこ。御堂会長がいて、社長と一緒に来た女秘書と話してたんです。そしたら御堂社長が来て、いきなりその女秘書を自分の背中にかばって、会長に何か言い返して...

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