第48章 黒崎悠真

去年の青雲の忘年会でのことだ。

彼女がふっと振り返った瞬間、うっかり男性にぶつかってしまった。反応は早かったはずなのに、それでも相手の袖を濡らしてしまう。けれど相手は驚くほど穏やかで、彼女の不注意をいっさい咎めなかった。

彼女はシャツ代を弁償しようとした。相手は何度も断ったが、彼女が譲らず、結局――最後に受け取ってもらった。

受け取ってもらった以上、桐生冬紀としてはこれでチャラだ。そう思って、その件は心の隅へ追いやっていた。なのに、彼がそれを口にした途端、記憶が鮮明に引き戻される。

桐生冬紀はあらためて、目の前の黒崎教授をまじまじと見た。

若い。しかも整った顔立ちで、肌は白め。

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